009 七三歩きのしぐさ・とうせんぼしぐさ
相手を思いやる江戸しぐさ 009
「七三歩きのしぐさ・とうせんぼしぐさ」
(しちさんあるきのしぐさ・とうせんぼしぐさ)
町人が往来を歩く時は必ず道の左端を歩いた。
威張りかえって道の真ん中を歩くのは、
田舎から来た武士たちだけだった。
往来は七分が公道であり、
自分が歩くのは、
端の三分という暗黙の約束があった。
なぜ道の中央を開けておくかと言うと、
緊急事態のためだ。
火事が起きて火消しが走ったり、
けが人を戸板に乗せて運んだり、
飛脚が走ったりするために道を空けておいたのである。
このしぐさを忘れて真ん中を歩くと
「とうせんぼしぐさ」と言われ、
背中に目をつけて歩けと怒鳴られた。
往来は天下のもの。
迷惑を考えずに歩くのは厚顔無恥も甚だしいというわけである。