034 世辞
相手を思いやる江戸しぐさ 034
「世辞」(せじ)
悪い言葉ではなかった江戸の気配り!
世辞というと、現代のお世辞と同じものと誤解されそうだが、まったく違うものだ。
お世辞は心にもないことをうわべだけ誉めたり、追従することをさすが、江戸時代の世辞とは挨拶の後に続ける辞令、言葉を指している。いわば大人の言葉だった。
例えば道で知り合いに合えば、「こんにちは」だけでなく、その後に「今日はいい日和ですね」「暖かくなりましたね」「いつもお元気そうですね」など、付け加える。これが世辞である。
一人前の大人が世間話の導入部の様なものであり、世辞を言えない者は大人として認められなかった。江戸では子供の頃より、世辞の言い方を躾られたという。